研究
研究概要
当研究室の主な研究分野は,知識工学(人工知能の一分野),自然言語処理,脳神経科学である.当研究室では,ソフトウェアが利用・共有可能な知識の構築と洗練,異なる知識の統合,推論を用いた知識の導出,知識グラフと自然言語処理を応用した計算機システム,MRI(磁気共鳴画像)を活用して取得した脳神経活動データを用い,脳の仕組みを深く,定量的に理解する研究などを行っている.
人間の知的作業を支援する計算機システムを構築するためには,知識を計算機が処理できるように形式化すること(知識表現)が必要である.知識表現モデルには,知識グラフ(概念や具体物間の関係を記述したグラフ),ワークフロー(業務の処理手順を定義したもの),ルール(規則・条件・判断基準などを記述したもの)などがあり,質問応答,音声対話,意味検索,知識継承,知識マネジメント,ソフトウェア開発,自動運転,エキスパートシステム(専門家の知識に基づいて,推論や問題解決が可能な計算機システム),セマンティックWeb(計算機が自律的にWebページの意味を理解可能なWeb)など,様々な領域に応用されている.しかしながら,知識表現モデルの構築コストが高いことが課題となっており,Webページ,専門文書,大規模言語モデルなどから,自動的に知識表現モデルを構築するための手法が求められている.以上より,当研究室では,知識表現モデルの自動構築や知識表現モデルと自然言語処理を応用した計算機システムの研究開発を行う.また,日常生活で必要とされる複雑で多様な認知機能がどのような神経基盤によって支えられているかを解明するために,MRI(磁気共鳴画像)を活用して取得した脳神経活動データを用い,脳の仕組みを深く,定量的に理解する研究を行う.
研究概要
主な研究テーマ
1. 知識グラフ構築支援
現状のWebページはHTMLにより,人間向けに記述されているため,ソフトウェアがWebページの内容を直接理解することは困難である.セマンティックWebでは,オントロジー(ソフトウェアが意味理解可能な辞書)を参照しながら,RDF(リソースを記述するためのデータモデルと記述言語)を用いて,Webページのメタデータを記述し,知識グラフを構築することにより,推論技術を用いた情報検索や情報統合などが実現できると期待されている.
知識グラフの構築コストが高いことがセマンティックWeb実現の課題であることから,自然言語文,Webページ,大規模言語モデルなどから,知識グラフの自動構築を行うための手法を研究する.知識グラフ自動構築の基礎研究として,テキスト中のエンティティ名(人や物の名前)を知識グラフ中のリソースに結びつけるタスクであるエンティティリンキングの研究や自動構築された知識グラフには欠落や誤りが含まれるため,知識グラフの補完や訂正をする手法についても研究する.
2. 知識グラフと自然言語処理の応用
知識グラフと自然言語処理に基づく意味処理システムを研究開発する.具体的には,家庭シミュレータVirtualHomeを対象として,日常生活に関する様々な抽象度の説明文からエージェントを動作させるために必要なアクションスクリプト(アクションとその対象オブジェクトから構成)を自動生成する手法や常識・行動・領域知識に基づき家庭内行動を推論する対話エージェントシステムを研究する.また,専門文書を対象とした質問応答システムにおいて,システムが判断に至った理由とその根拠を,文献を引用しながら説明可能なシステム,大規模言語モデルに基づいて判決・裁決文を要約する手法,人の発話の意味を考えて議論可能な議論システムなどを研究する.
3. 脳神経科学研究
日常生活で必要とされる複雑で多様な認知機能は,どのような神経基盤によって支えられているのでしょうか.この問いに答えるため,MRI(磁気共鳴画像)を活用して取得した脳神経活動データを用い,脳の仕組みを深く,定量的に理解することを目指している.
1.構造・機能理解
MRIにはさまざまな種類(撮影手法)があり,各手法を組み合わせることで脳の特性を多角的に解析できる.例えば,脳内の異なる領域間のつながり(接続性)を構造的データで調べる一方で,機能的MRI(fMRI)を活用して,知覚や認知,言語理解が脳内でどのように処理されているのかを研究する.さらに,これらのデータを統合的に解析することで,脳の構造と機能の相互関係をより深く理解することを目指している.このアプローチにより,構造的な接続パターンが脳の機能的活動にどのように影響を与えるのかを解明するだけでなく,脳内ネットワークが情報処理を行う仕組みを包括的に捉えることが可能になる.
2.老化や病気による変化
老化や疾患に伴い,脳はどのように変化するのか.この問いに対して,健康的な老化と疾患に関連する老化との違いに焦点を当て、脳ネットワークが加齢に伴いどのように変化するかを解析している.この研究では,老化が認知機能や神経接続性に与える影響を解析することで,認知症をはじめとする老化関連疾患の予防や早期診断のための新たな知見の提供を目指している.
3.ツール開発
近年,脳画像解析に関連するさまざまなPythonパッケージが開発されており,それらを活用した効率的な解析が可能になっている.しかし,高次元かつ複雑で膨大な脳神経活動データを扱うには,さらに使いやすく直感的なツールが求められる.そのため,視覚的にわかりやすいユーザーインターフェース(UI)を備えた解析ツールの設計に注力している.特に,生体データ解析においてはデータの品質管理(Quality Control)が不可欠である.データの処理や解析を効率化し,プログラミングの知識がなくても利用しやすい環境を提供することを目指している.
修士研究テーマ
2024年度修士研究テーマ
- 大規模言語モデルを用いたオブジェクトの状態と関係に基づく家庭内タスクプランニング
- 基礎疾患を有する患者を対象とした知識グラフに基づくレシピ推薦システム
2023年度修士研究テーマ
- マルチモーダル大規模言語モデルと画像キャプションに基づく描画内容に即した併置型駄洒落の認識
- 大規模知識グラフを対象とした英語エンティティリンキングモデルの日本語対応
- 大規模言語モデルに基づくWikipediaから抽出した未知エンティティを用いたDBpediaの拡張
2021年度修士研究テーマ
- 家庭環境知識と常識推論に基づく双方向型対話ナビゲーションシステムの開発
- 知識グラフに基づく質問応答システムにおける論理形式パターンを用いた論理形式検索の改善
卒業研究テーマ
2024年度卒業研究テーマ
- Reproducibility of multimodal gradients in the human basal forebrain-cortical connectivity
- Neural correlates of sentence comprehension using sentence embedding on narrative fMRI data
- 皮質勾配(Cortical Gradients)解析を用いた物語理解における脳の階層的構造の研究
- 開世界仮説に基づく知識グラフ補完評価のためのプロパティ不変性の分析と自動分類
- VirtualHomeを対象とした抽象的なタスク記述からのアクションスクリプト生成の改善
- マレーの欲求理論を用いた大規模言語モデルに基づく対話ナビゲーションシステムのためのプロンプト圧縮手法
- 大規模言語モデルを用いた議論型文章からの議論モデルに基づく知識グラフの生成
- RDFスキーマ推論規則を対象とした大規模言語モデルの推論能力の評価
- 大規模視覚言語モデルおよびオブジェクトの属性と関係を用いた画像生成プロンプトの生成
- 知識グラフと大規模言語モデルに基づく学術論文検索システム
2023年度卒業研究テーマ
- Wikipediaの赤リンクを用いたDBpediaにおける未知エンティティの抽出
- 文章生成AIが生成した家庭内危険行動の理由に対する根拠提示システム
- LangChainのメモリに基づくGPTの日本語対話継続能力の分析
- 文章生成AIに基づく家庭内行動の推論と対話型ナビゲーション
- GPTに基づく併置型駄洒落生成
- マルチモーダル大規模言語モデルに基づく画像に関連する併置型駄洒落生成
- 種表現と文字単位N-gramの音韻類似性を用いた駄洒落認識
- Wikidataを対象としたGPTに基づくエンティティリンキング
- 大規模言語モデルに基づく複数のITS標準規格を横断した類似用語検索システム
- 知識グラフに基づく対話型質問応答データセットを対象としたGPTの質問応答能力の分析
2022年度卒業研究テーマ
- VirtualHomeを対象とした日常生活行動説明文からのアクションスクリプト自動生成
- 店舗と商品とレシピ知識グラフに基づくソーシャルロボットを用いた商品棚案内システム
- 人名を対象とした日本語エンティティリンキングの改善
- 常識的知識グラフに基づく理解容易性及びユーモア性を考慮した直喩表現生成
- 常識的知識グラフ及び単語埋め込みを用いた重畳型駄洒落ユーモア認識
- Sentence Transformersに基づく定義文が意味的に類似するITS用語検索システム
- 対話イベント知識グラフに基づくユーザ嗜好を考慮した知識獲得機能を有する雑談音声対話システム
- 汎用言語理解機構における駄洒落認識,生成及び文脈制御に基づく雑談対話システム
2021年度卒業研究テーマ
- 画像キャプション生成に基づく描画内容に即した駄洒落文の選択手法
- 重畳型駄洒落ユーモアにおける常識的知識グラフを用いた潜在表現抽出
- 意外性,新規性および具体性を考慮したユーモアを含む直喩表現生成
- PRINTEPSに基づくマルチモーダル対話システム開発支援環境の構築
- 汎用的言語理解フレームワークへのボケ検出機構の統合
- 知識グラフに基づく質問応答におけるエンティティと関係リンキング精度の検証
- DBpediaを対象とした日本語エンティティリンキング
- 大規模知識グラフに基づく知識獲得機能を有する雑談対話システム
- タスク指向型対話システムにおける知識グラフを用いたスロットフィリング支援
- マルチモーダル情報に基づく話者の感情推定とソーシャルロボットの表情選択
- DBpediaに基づく知識グラフの埋め込みを用いたウィキリンクに対応するプロパティ予測
2020年度卒業研究テーマ
- 知識グラフ埋め込みを用いたオントロジー構築
- PRINTEPSワークフローからのROS2サービスクライアントコード生成
- 自然言語による知識グラフへの問い合わせにおけるプロパティ同定
- 知識グラフと用例に基づく雑談対話システム
- コンポーネントオントロジーに基づくPRINTEPSワークフロー構築におけるコンポーネント選択支援
- プロセスオントロジーに基づくPRINTEPSワークフロー再利用支援
- マルチモーダル情報に基づくソーシャルロボットの表情生成
- PRINTEPSのためのFurhatモジュール開発
- 統合型対話システムにおける知識グラフを用いたタスク指向性判定